第24回 ミライへのバトンをつなぐために

日本防災士会山口県支部
研修部副部長 工藤 美佐

PTA役員として東日本大震災支援活動を通した防災啓発活動をはじめて11年。その翌年から災害ボランティア活動をはじめ、様々な被災地を訪れるようになったことが私の大きな転機となりました。いくつもの尊い命が奪われた現場を目の当たりにし、遺された方々の思いに触れるなかで、防災の必要性を痛感しました。

このような災害が地元で起こったら私たちのまちは適切な対応ができるのだろうか、どれだけの支援が来て、それをどれだけ受け入れ、復旧・復興に取り組んでいけるのだろうかと思案するようになりました。それと同時に、今は手元に居るわが子たちを進学や就職でこのまま目の届かないところに送り出していいのだろうか、できることなら親として『生きる力』を手渡しておきたいと考えるようにもなりました。

そこで、看護師として命と向き合ってきた自身の経験もあわせて、命を守るための防災を広め、その大切さや、それぞれのできることを伝えていきたいと、防災士の資格を取得しました。看護師業務には患者様の療養上の世話と診療の補助があり、その中に患者様の置かれた状況や医師の治療方針などを、その特性に合わせてわかりやすく伝え理解を促す役目があります。この通訳のような役割を防災士としても担っていきたいと思っています。防災の分野は幅広いうえに難しい内容が多く、敬遠されがちです。だからこそ、わかりやすくかみ砕き、日常生活に結び付けて伝えることで、防災を身近に感じ、災害を自分事として取り組んでいただけるのではないかと思います。

実は誰もがすでにやっていることの中に防災のエッセンスはたくさん散りばめられています。これからも通訳、防災講座を通して子どもたちや地域の方々が自分たちの強みに気付き、楽しみながら自然に防災に親しんでもらえるよう、いざという時に備えて、生き残り・生き抜くための力を思考と行動の両面から育て、ミライへのバトンをつないでいきたいと思います。

【工藤美佐・プロフィール】

山口災害救援・山口県災害看護研究会(YDNT)所属。二児の母。看護師の資格を持ち、総合病院勤務を経て看護学校非常勤講師を務める。その傍ら、10年に渡ってPTA活動に参加し、家庭教育支援チーム・食育チーム等を立ち上げ、仲間とともに子ども達の生きる力を育成するために邁進中。
工藤美佐 | TEAM防災ジャパン