第25回 地球の歴史から学ぶ〜原発事故防災の必要性

認定NPO法人いわき放射能市民測定室たらちね
理事長 鈴木薫

平成23(2011)年3月11日に起きた東日本大震災は、今から千年以上前の貞観11(863)年に起きた「貞観地震」と同じ地域で起きた同等規模の災害でした。地震というのは、地球構造の性質上、定期的に起きるもので、歴史から確実に学ぶことができる自然現象です。もちろん、誤差はありますが、誕生から約46億年の地球の尺度では大きな時間のずれではなく、いたってシステマチックな現象です。東日本大震災は、突然の天変地異ではないことが、この歴史から知ることができます。

しかし、人間はこの大地震に備える防災を怠り、原発事故という平安時代にはなかった未曾有の人災を抱え込むことになってしまいました。津波が来ても電源を喪失しないような対策が事前に取られていればあのような事故は起こらなかったはずです。

東日本大震災以来、地震や津波から身を守る日本の防災は、それ以前よりも情報も増え、体制も整い、考える人が多くなりました。それは、とても良いことで「知っていれば助かる命」を守るために情報や知恵は大切だと思います。

しかし、「原発事故防災」は、まだまだ発展途上です。原発事故にも「知っていれば助かる命」があります。そのための被曝防護の知識は重要なものです。

日本は地震国です。その一方で数多くの原発があります。

私たち“たらちね”では、子どもたちの命を守るため、被曝防護に対する備えを広めるための取り組みを始めました。東日本大震災での福島第一原発事故の経験を無駄にしてはいけません。

防災を考える現場の人々と繋がりながら、同じ過ちを繰り返さないことが大事だと考えています。

【鈴木薫・プロフィール】

福島県いわき市小名浜生まれ。同市に在住。東日本大震災発生後、食の安全を守り、被曝から子どもたちの命を守るため、いわき市内の有志や母親たちと協力し2011年11月に“たらちね”を設立。福島第一原発から漏れ出る放射性物質による被曝被害が続く中、現在、“たらちね”では、環境保全の観点にも目を向けた測定活動と情報公開を実施している。