認定NPO法人かながわ311ネットワーク
代表理事 伊藤 朋子
私たちの団体では、マンション防災が活動の柱の1つです。
マンションは耐震性が高いのにあえてマンション防災ってどういうこと?と疑問に思われた方、いらっしゃいますよね。確かに日本のマンションは耐震性が高く、戸建てに比べて倒壊する可能性は非常に低いですが、高層階では揺れが大きくなって家具の転倒による負傷が多く報告されています。
エレベーターが緊急停止することでの閉じ込めが発生することもあります。停電によって戸建て以上に多くの不都合が発生します。マンションでは停電は断水に直結します。エレベーターの停止で高層階の高齢者は外に出られなくなり、介護サービスも使えなくなります。最近は、高齢をきっかけに、戸建て住宅からバリアフリーで便利なマンションに住み替える方も増えていますので大問題です。
ふだん便利なマンションの暮らしは、大災害でインフラが停止すると戸建てよりも生活困難に見舞われることになります。水などの支援物資がマンションの前まで届いたとしても、どうやって高層階まで運ぶのか、という問題が発生します。要援護者の被災生活はマンションでも大変です。
マンションは耐震性が高いですが、大規模災害では無傷ではいられません。災害後には補修の問題が待っています。分譲マンションは、多くの人の共有物です。各戸の室内は専有物ですが、エントランス、共用廊下、エレベーターなど全員の共有物になっている場所が多く、補修には総会での決議が必要です。部屋の位置や階数によって壊れ方に差がある中資金を用意し、合意を形成して補修を進めて行くには管理組合役員の努力と、所有者、居住者全員の協力が欠かせません。大変なことばかりのようですが、区分所有者、居住者にはいろいろな分野の専門家がいるはずで、協力すれば強い力となります。ふだんから全員が同じ屋根の下に暮らす共同所有者としてのつながりを活かすことが、災害に負けない強靭なマンションになる秘訣です。
【伊藤朋子・プロフィール】
神奈川県横浜市在住。認定NPO法人かながわ311ネットワーク代表理事。災害復興くらし応援・みんなのネットワークかながわ共同代表。防災士。2011年3月11日の東日本大震災をきっかけに防災に関わり始める。東日本大震災の支援活動で現地の方々から頂いた宿題「災害に備える」を広めるべく、日々活動中。