日本デザイン福祉専門学校 准教授
宮野 由紀子
先日の新聞記事で「浸水想定区域に立地する保育所や幼稚園などが、全国の主要都市で約4割に上る」「同区域にある施設の2割弱は、法律で義務づけられている避難確保計画を作成していない」と。また、避難確保計画を作成していない理由は「施設側の人手不足のほか、義務化されているとの認識が薄い」と自治体は回答した」、という新聞記事です。
保育業界に身を置きつつ、保育の安全の講師に就いている私ですが、改めて問題点を突きつけられると、残念な気持ちと、「あーやっぱり」という複雑な気持ちになりました。
保育でなんらかの安全に関する問題が発生するたびに、必ずといっていいほど「人手不足」「忙しい」という理由が浮上します。
保育現場の人手不足の理由は数多くあります。解決の一つとして、保育士配置基準の上乗せなど、国や自治体に訴え続けることは大切ですが、すぐに制度は変わりません。しかしながら自然災害は待ったなしです。このままでは子どもの命は守れません。
慢性的にマンパワーが足りない保育業界、なんとかいい方法はないかしら、と考えているときに、知り合いの園長先生が勤務する園を管轄している東京都町田市で保育防災に力を入れていることを知りました。
【人手不足の中で行う防災の提案――町田市を例に――】
町田市は全国でも珍しく民間企業のノウハウを防災に活用している地域です。最も特徴的なことは、三井住友海上火災や首都大学東京の教授によるマニュアルの作成など「産学官」で、保育・幼稚園の防災を支えています。私はこれからの保育防災は「出来ないからやらない」ではなく「できないなら専門家の知恵を」といった、町田市のような柔軟な対応が必要だと思います。また、それに伴い、防災分野の専門家を養成することも急務であると考えています。これはひとごとではなく、私自身ももっと防災について学ぶ必要があると、改めて感じています。
【宮野由紀子 ・プロフィール】
大学院修了を機に、大学・短大・専門学校で幼稚園教諭・保育士の養成に就く。現在は日本デザイン福祉専門学校で、子どもの安全・防災・救急の授業を担当している。他、 MFA チャイルドケアプラス(救急法)のインストラクター、川崎市消防局応急手当普及員、子ども安全管理士協会YOKOHAMA の事務局長に就き、応急手当の実技指導や保育リスクマネジメントの講義なども行っている。防災教育推進協会講師も務める。