第12回 「おたがいさま」「ありがとう」が言い合えるような環境に〜赤ちゃんが泣くことへの理解について〜

編集者/育児クイズパパ力検定開発・運営
髙橋幸恵

避難所は、赤ちゃんを連れている家族も安心して過ごせる場になると良いと心底思います。赤ちゃんが泣くのは不快な時です。赤ちゃんの不快を取り除けば泣き止みますが、何が不快なのかを見極めるのは、いつもそばにいるお父さんお母さんであってもなかなか難しいものだということを、この社会の中でどれほどの人が知っているでしょうか。実を言うと、母親本人ですら「母だから泣き止ませられるはず。泣き止ませてあげられないのは自分が悪いのだろうか」と自分を責めたり不安を抱えたりしていることがあります。避難所の体験談で、「早く泣き止ませろ」といった言葉を浴びせられた人の話を聞くと、心がいたみます。

私は、出版社勤務を経て独立しました。自身の育児経験などから父親支援の必要性を感じ、LINEを活用した父親支援サービス「育児クイズパパ力検定」を開発。主に0〜1歳半の育児に役立つ、専門家監修のクイズ(全部で250問ほど)を毎日1問配信しています。命を守る知識(事故予防、家庭での応急処置、救命法など)を手厚く提供しているのが特徴の一つで、今後は防災についても入れていきたいと考えています。

赤ちゃんの泣きについてのクイズは、思い入れの強いものの一つです。赤ちゃんは、空腹やオムツ以外でも、痛い、眠い、びっくりした、暑い、かゆい、肌触りが悪い(チクチクする、ゴワゴワするなど)といった理由で泣くこともあります。ですが、そうしたことに一つ一つ対処していっても泣き止んでくれないことは往々にしてあります。月齢の低い赤ちゃんでは、何も原因が見つからないのに、特に夕方以降から長時間泣き続ける時期もあり、お父さんお母さんを困らせていることもあるのです。親は日々赤ちゃんと向かい合いながら、「わかってあげられた」「わからない」を繰り返し、赤ちゃんとのコミュニケーションを深めていっています。

はじめて子育てをする親はわからないことだらけですし、赤ちゃんを健やかに育てられるのだろうかという不安もあります。昨今の情勢下で、孤独な子育てをせざるを得ない人が増えていますが、本当は、ご近所や親戚家族、同じような境遇の友人家族などとともに互いの苦労や楽しさを分かち合いながら子どもを育てていける環境があるのが理想です。

避難所が、さらに孤独を深めてしまう過酷な場となるのではなく、優しく見守ってくれる目や、支えてくれる手があるよう願います。例えば、同じ境遇の世帯を近くにする、小学生など少し大きなお兄さんお姉さんに助けてもらう、高齢者の知恵を借りるといった、助け合える環境をつくることが有効ではないでしょうか。

「おたがいさま」「ありがとう」が互いに言い合えるような環境づくりは避難所においても意識したいものですが、日頃からの相互理解や温かな関係性の構築が、有事の備えの第一歩だと感じています。

【高橋幸恵・プロフィール】

専門家監修のLINEで1日1問「育児クイズパパ力検定」を開発・運営。出版社で学習書や実用書・雑誌テキストなどの編集を手がけ2020年からMama’s Sachi代表。編集者。防災教育推進協会の防災検定などを通して防災の学びを継続中。育児・子育て、食(主に薬膳)に関するコンテンツの企画制作を行なっているほか、コラム執筆も手がける。
「育児クイズパパ力検定」はBabyTech® Award Japan 2020 powered by DNP 大日本印刷 で特別賞を受賞。

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