第22回 「体験したからこそ伝えたいこころといのちを守る備え」

KOBE防災コミュニケーションズ
代表 天満 ゆか

阪神・淡路大震災(震度7)を神戸市灘区で体験。関西では地震が起こらないと言われていた当時、何が起こった全くわからず、生まれて初めて死ぬかもしれん‼という恐怖と不安がずっと続きました。

中学生まで暮らしていた神奈川県では子供の頃から防災訓練や防災教育の機会があり、いつも地震が来るかも・・・という心構えでいました。ところが、神戸に戻ったことで、すっかりこころの備えを捨て去っていた全くの無防備な状態での被災によるこころのショックは、想像を遥かに超えるダメージを私は受けました。

数年後、夫の仕事の関係で名古屋へ引っ越し、赤ちゃんだった娘を抱っこしながら区役所を訪れた際、災害ボランティアセンターを立ち上げた方から声をかけられました。ここはこれから大きな地震が来るからそんな小さいお子さんがいるなら備えたほうがいい。今度ここで防災講座があるからというお誘いを受けた時に、神戸で被災した旨をお伝えしたことが、語り部活動の始まりです。そして、語り部活動と地域防災活動をしながら、どうしたら被害を少なくできるのかを学び始めました。そんな中で“備えていたら助かった命がほとんどであった”という事を知りとてもショックでした。これはお伝えしないと後悔すると思い、わたしには何ができるだろうと思っていた時に今度は防災心理学の先生から“地震のこころへのダメージを減らすには、地震の体験を聞いておくことが一番効果がある”と言っていただき、『体験したからこそ伝えたい こころといのちを守る10のヒント‼』という防災ハンドブックを作成し、そのハンドブックに基づいて防災講座を行うようになりました。

私は、いつも講座を受けてくださる方に、地震の体験の話をしながら、「今、自分が被災したらどうなるかをイメージし、疑似体験しながら聞いてください。そして、どうしたらよかったのか?何ができるのか・・・を考えておいてください」とお伝えしています。

例えば、私が寝ている場所にいろんなものが倒れてきた話をすれば、自分の寝床は大丈夫かな?と、自分の寝室をイメージしてくださいます。また、「被災して自分が家族や大切な人と連絡がとれず、安否が気になって、いてもたってもいられなくなりました」とお話しすると、そうならないためには・・・?と自分のことに当てはめていくと具体的に何をしといたらいいのかが見えてきます。そして、こころが動けば行動をしてもらえます。

  • 日本に暮らす私たちは、地震は避けられません。
  • 地震が起こってしまう前の今が備えるチャンス‼
  • 備えれば備えるほど危険や不安は減らせます。

皆さんが被災しませんように、被災してもダメージが少なくてすみますように・・・1人でも1つでも多く。こころといのちを守る備えをしてほしい。

被災した地獄のような状況からすると、日頃の生活はとっても恵まれています。その生活が守れますように・・・日頃の生活への感謝も込めて、これからも お伝えしていきたいと思っています。

【天満ゆか・プロフィール】

神戸市出身。阪神・淡路大震災で被災。語り部、防災危機管理者、防災士、市民救命インストラクター。関西を中心に『体験したからこそ伝えたいこころ&いのちを守る10のヒント』防災講座を行う。兵庫県三田市のHONEY FMの気軽にマイ防災のコーナーに出演。現在、日頃から役立つ、災害時のこころといのちを守る備えになる簡単な縄文式健康法も推進中。手話歴も20年。手話サークルや聴覚障害者協会でも講座経験もあります。