第30回 保護者と保育園を繋ぐ「安心・安全」な保育園を目指して

一般社団法人保育の寺子屋
代表理事 藤實智子

ここ最近、保育園での怪我や置き去り事故など、保護者が不安になるようなニュースが頻繁に報道されています。「平時でも事故や置き去りがこれだけ起こっているのに、災害時に子どもたちを守ることはできるのだろうか」という不安を持つ保護者も多いのではないでしょうか。

このような事態になっている原因は保育士不足にあると言われていますが、人手不足が解消されれば子どもたちが安全かといえば、私はそうではないと思っています。私が消防官になった時、まず初めに学んだことは、チームワークです。人を助けるためには、お互いを信頼し合うこと、そうでなければ人を助けることもできないし、チームの誰かが怪我をします。

保育の現場でも同じように保育士達のチームワークが大切です。そして、保育士同士だけでなく保護者との信頼関係、連携も必要不可欠です。自らの力で身を守ることができない乳幼児を守るためには、保護者と保育士が共に守り育てる『共育』の心がなければなりません。

保護者は保育士たちにすべて任せるのではなく、時には保育の手伝いをしたり、園内研修に一緒に参加したり、保育園側も保護者がもっと自由に保育に関わることができるよう開放的な園にすることで、すべての人が安心して過ごすことができるようになります。それが保育園の理想形ではないでしょうか。

このような理想の保育を目指して、『保育士のための保育防災ハンドブック』と『保護者のための保育防災ハンドブック』を制作しました。このハンドブックは、災害時の初動対応や応急手当法のほか、保育園との連絡方法や避難場所のマップなどを自分で記入することができます。A6サイズなので、常に携帯することができます。携帯していることで、災害に対する大きな備えとなります。園と保護者がそれぞれ持つことで、共に安心して子どもたちを守り育てるためのツールとして活用していただければと思っています。

【藤實智子・プロフィール】

保育防災コンサルタント、東京消防庁の元女性消防官。保育士の資格を取得後、認可保育園の園長を経て独立。一般社団法人保育の寺子屋を立ち上げ、「保育に関わるすべての人が安心して過ごせる環境」を目指す。現在は、保育園の防災指導や自治体や保育団体主催の保育士・保護者向け防災講座、保育防災のプロを育てる『保育防災スペシャリスト認定講座』等を行っている。消防官時代の訓練経験と、保育園時代の現場経験を活かし、保育士達に寄り添った実践的で自ら考える講座が好評。
保育士のための保育防災ハンドブック・保護者のための保育防災ハンドブックは現在STORESにて販売中(1冊220円税込)