減災と男女共同参画 研修推進センター 共同代表
浅野幸子
わたしは普段、ジェンダー/多様性の視点(性別や年齢、障害の有無、国籍・母語の違いなど)に立った防災啓発に取り組んでいます。その理由は、災害の被害は人々に平等に降りかかるわけではなく、それぞれに異なっていて、必要な支援も違うからです。
でも、女性・子ども・障害者など、災害時の困りごとが多いからと言って、その人に力がないわけではありません。むしろ課題に気づくことができるだけに、防災リーダーとしての活躍も期待されます。平常時から多様な人が当事者の目線で力を発揮できるように環境を整えることが、防災対策の質を的確に上げる近道の一つだと思います。
たとえば、「女性」で「障害者」という、二重に不利益を受けやすい立場から障害者の権利に関するテーマに取り組む、“DPI女性障害者ネットワーク”は、東日本大震災後すぐに、避難所での障害者支援のためのガイド「あなたのまわりにこんな方がいたら―避難所などでの障害者への基礎的な対応」を作成。コンパクトなのに、たいへん具体的かつ分かりやすいものとなっています。
詳細は以下をご覧下さい。
なお、災害でライフラインが途絶えると、家族ケアは重労働になり、仕事と家族ケアの両方を担う人は、仕事に行けずに収入減・解雇・降格に直面する可能性も。シングルの人も、被災しつつも職場へ行き、復旧、出勤できなくなった人の穴埋め、高齢の親の支援など、たいへんな経験をしてきました。こうした困難は、女性がより厳しく直面しがちですが、父子家庭の父親、家族の介護を担う男性も同様です。また、災害時は、男性の過労死や自殺のリスクも高まる傾向にあります。
だからこそ、社会全体で効果的に補いあえる仕組みをもつ防災対策を目指すことが大切です。最後に、私も作成に関わった国のガイドラインをご紹介します。対策のあり方や好事例、避難所運営のチェックシートなど実践的です。「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」(内閣府男女共同参画局)
https://www.gender.go.jp/policy/saigai/fukkou/guideline.html
【浅野幸子・プロフィール】
浅草育ち。阪神・淡路大震災で学生ボランティアとして被災地に入ったのち、NGOのスタッフとなり現地で4年支援活動を継続。帰京後は市民団体で働きながら夜間大学院に進学(政策科学修士)。
各地で研修や講演を行うほか、国や自治体の政策にも関わる。早稲田大学地域社会と危機管理研究所の招聘研究員も務める。共著に、『災害とトイレ 緊急事態に備えた対応』(日本トイレ協会編、2022年6月発行、柏書房)。