気象予報士・女優
半井 小絵
私は2002年から9年間、NHKで気象キャスターとして日々の気象情報を届けてきました。その仕事を通して必要な人に防災情報を伝えることの
大切さを実感しています。そして現在も情報を活用すること、自分の住んでいる地域の災害リスクを知ることなどの重要性をお伝えするために、気象や防災の講演を行っています。
日本は自然災害の多い国です。気象災害だけでなく火山噴火、地震、津波など多くのリスクがあります。私自身も気象以外の幅広い知識が必要であると考え、被災地の調査などに参加し現場を知る機会を持つようにしています。
その活動の一つとして特定非営利活動法人火山防災推進機構で客員研究員をしています。火山と気象の関係性は、地面と空のことで直接繋がりがないように思われますが、決してそうではありません。火山灰が降る地域では気象情報で風向きが大切に扱われています。また火山噴火後に雨が降ると火山泥流が発生し、融雪によっても被害が拡大します。火山ガスの流れる方向は人体にとって危険で、木々は枯れ、金属の腐食も見られます。その一方で火山灰の水はけのよい土地ならではの植物が生育し、何より、温泉は火山の恵みです。つまり豊かな自然は災害と隣り合わせなのです。
今年も本格的に雨の季節が始まろうとしています。気温が高くなるこの時期は、空気中に含まれる水蒸気量が多くなり雨雲が発達しやすくなります。これから本州付近も雨への警戒を高め、気を引き締め直す必要があります。
気象庁の危険度分布「キキクル」は、土砂災害や河川の洪水、浸水のリスクを詳しく知ることができるのでとても便利です。今年6月1日から、線状降水帯の発生を半日前から予想する情報も発表されます。それまでは線状降水帯の発生がレーダーで認められた時に情報が出されていました。情報を活用して、「一手早め」の行動を心がけ、ご自身の大切な命を守ってください。
【半井小絵 ・プロフィール】
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修了。日本銀行在職中の2001年3 月に気象予報士の資格を取得し、2002年4月より2年間NHK「関東甲信越地方の気象情報」、2004年より7年間NHK「ニュース 7」(月~金)の気象キャスターを務めた。現在は講演のほか、式典など の司会を務め、女優としても活動中。7月 23 日〜 31 日、舞台『帰って来た蛍〜令和への伝承』(俳優座劇場)に出演予定。特定非営利活動法人火山防災推進機構客員研究員、防災教育推進協会講師なども務める。