第31回 ウェルビーイングな防災 ~ 安全と幸福を築くアプローチ ~

日本防災士会 理事
山岡 みゆき

能登半島地震でお亡くなりになられた方々に哀悼の意を表し、被災者とご遺族に心からお見舞い申し上げます。

私たちは、ともすれば安全と幸福が当たり前のように日常を送りがちですが、地球上で頻発する自然災害はその当たり前を揺るがすものであり、能登半島地震もその一例でした。

過去、災害が発生するたびに、専門家の方々により検証が重ねられ新しいアプローチが模索されていますが、今回は素人目線で『ウェルビーイング×防災』に焦点を当てたいと思います。WHOによれば、ウェルビーイングは「肉体的・精神的・社会的に満たされた状態」と定義されています。それを作り出す要素として①ポジティブ感情(愛、喜び、感謝、安らぎ、興味、希望、誇り、愉快、鼓舞、畏敬)②熱中③豊かな人間関係④人生の意義⑤達成感の5つがあるとの研究結果があります。

これらの要素を知り、自分にとっての影響度の優先順位を考えてみることをお勧めします。自身のウェルビーイングを高め、地域との結束を深めて行くことは、充実した日々に繋がるだけでなく、災害時不安やストレスが増大する中でも、心の安定を取り戻すようコントロールできる、つまりレジリエンスを高める有効な手段になると考えるからです。また、SDGsの「地球上の誰一人取り残さない」社会・経済・環境に統合的に取り組むという点にも、ウェルビーイングな防災との親和性を感じることができます。持続可能な生活様式を導入し、地球環境にも配慮した未来の基盤を築くことも、ウェルビーイングな防災の一環ではないでしょうか。

ウェルビーイングな防災は、単なる物理的な安全確保だけでなく、ホリスティックなアプローチで人々の幸福と生活の質向上を同時に追求するものです。このアプローチは、日々より豊かで安心感に満ちた生活を築きつつも、将来の災害に対する備えの手助けとしても期待できると思うのです。

【山岡みゆき・プロフィール】

特定非営利活動法人日本防災士会 理事、同法人ダイバーシティ防災推進委員会委員、同法人岡山県支部所属。阪神淡路大震災の影響で勤めていた会社が解散。それを機に、「助ける人」になりたいと建設業にキャリアチェンジ。人事・教育に軸足を置きながら、復旧復興を支える建設業の魅力を伝えることに注力して来た。様々な場面で出くわすジェンダー問題についても、日本フェムテック協会認定フェムテックエキスパートの学びを活かしたいと模索中のキャリア支援者。