第10回 考えて行動する能動的避難訓練を!

防火・防災アドバイザー(元東京消防庁)
清水 眞知子

日本では子ども達への避難訓練と言えば、学校の教師の指示等による短時間に校庭等への移動という形が多いのではないでしょうか。例えば、小学校等では、発災のベル音等を合図に「おかしも」の約束と称して「押さない、駆けない、喋らない、戻らない」といった禁止事項を約束事として、教室等から校庭等へ短時間に移動するといった訓練が主流であり、能動的にどのように考えて行動するかについては、あまり問題視されていないのではないでしょうか?

ほとんどの学校には自動火災報知設備(以下、「自火報」という)や屋内消火栓、防火扉等は設置されています。実際に発信機や感知器を作動させ、防火扉の閉鎖、屋内消火栓の活用等一連の初動対応を教職員が実施する中で、子ども達の避難訓練は実施されることが重要と思います。教職員が考えながら行動する、その姿を見ている子ども達はさらに考える。錯誤しながらも真剣に取り組む姿勢が子ども達への危機管理意識の醸成に繋がっていくことになると確信します。さらに自宅を想定した場合、一番危険な時間帯である深夜に、寝室から火災が発生した場合はどう行動すべきかについて、学校教育の場でもカリキュラムとして採用されることを切に希望します。

今から約20年前にアメリカ・カナダの小学校で実際に防火・防災スペシャリストによる授業を視察したことがあります。ここでは小学校3年生が年間カリキュラムに基づき、自分の身体を護ることの一環として、住宅用火災警報器のベル音を聴いたらどう行動するか?、必ず四つんばいになりドアに向かい、ドアノブが熱ければドアは開けず、もう一方のドアやバルコニー等に行くこと等、実際に機器を見せながらの教育です。これと併せて自分の身体に火が着いた場合は「ストップ・ドロップアンドロール」の教育も徹底されており、子ども達が自慢げに演技を披露してくれました。

危機管理教育に関しては、日本の教育は他の国に比較しても遅れている感が否めません。管理する側の教職員もワンパターン的な避難訓練ではなく、訓練のなかで失敗を重ねながら、PDCAに基づき能動的かつ実践的な避難訓練の必要性を痛感しています。

【清水眞知子・プロフィール】

東京消防庁に勤務し、主に防火・防災教育等に従事。防災部(元指導広報部)では、防災訓練の基本および普及方策等に従事。海外の消防事情調査ではアメリカ・カナダの学校教育現場の防火・防災授業等の実態等を1か月間調査。這って避難する子ども達の訓練風景に圧巻。危機管理教育の必要性を痛感。現在は福祉施設職員等へオーダーメイド型防火・防災教育訓練等を実施。防災教育推進協会講師も務める。